スター商事

山岳ライターの商品体験レポートProduct Report

パックラフトで川を下ろう! 多摩川【御嶽駅〜青梅駅】

今回の主役であるパックラフトとは、背負って持ち運べる軽量折り畳みボートのこと。

鮎釣りシーズンが始まる直前の6月中旬、昨年からスター商事が取り扱いをはじめたフロンティアのパックラフトに乗り込んで、東京都の多摩川でダウンリバー(川下り)を楽しんできました!

果たして無事にゴールへたどり着けるのか…。少々長くなってしまいましが、最後までお付き合いください。体験レポートをお届けします!

 

スタート地点はJR青梅線の御嶽駅

自宅からパックラフトを背負って駅に到着。まさかの青空にテンション↑↑

やってきたのは、東京都の多摩川沿いを東西に走る、JR青梅線の御嶽駅。

駅前を流れる多摩川は、ラフティング、カヤック、フィッシングなどを楽しむことができ、御嶽駅からアクセスできる河原はボルダリングの人気エリアとして知られています。

前日まで天気予報には傘マークが付いていたのですが、当日は想定外の青空が広がり、絶好のパックラフト日和に! 太陽まで顔を出し、肌が焼けるほど強い日差しが照りつけてきました。

御岳橋から今回パックラフトで下る多摩川を観察。強い日差しで橋の欄干も温かい

今回のコースは御嶽駅がスタート地点。まずは駅前の橋を渡らずに左手に曲がり、バス停脇から右手に下る坂道を下りながら、多摩川のほとりへ向かいます。

奥に見える流れが多摩川。この階段を下ると河原に出る

この階段を下った先に公衆トイレがあり、ここが便利な準備ポイント。近くには東屋もあるので、持ってきた荷物を整理しながらパックラフト用のウエアに着替えましょう。

今回用意したウエアがこちら。ウエットスーツにネオプレーンのソックスがポイントで、あとは速乾性の高い服を着てレインジャケットを羽織るだけ。ヘルメットとライフジャケットは安全を守る必須装備。足元はサンダルでOK

「①ウエットスーツ ②カヌー用のヘルメット ③パドリング用アンダーウェア/マーシャス「W-Air・ロングスリーブ」 ④登山用のレインジャケット ⑤袖からの浸水を防ぐリストバンド/マーシャス「エアースキンブラック メタリックス・リストマスク」 ⑥速乾性に優れるショートパンツ ⑥PFD(ライフジャケット) ⑦サンダル。ストラップでかかとを固定できるモデルを選ぶ ⑧ネオプレーンのソックス

時間を早送りしてすべてのウエアを身に付けた様子。登山に親しんでいれば兼用できるウェアは多い

身支度を整えたら今度は河原に移動。ここでパックラフトを膨らませるなど、出発前の最終準備を行います。

 

漕ぎ出す前に、パックラフトについておさらいしよう!

体験レポートをお届けする前に、知っている人も知らない人も、パックラフトがどんな道具なのか、改めて簡単におさらいしましょう。

パックラフトはアラスカの大自然を旅するために生まれたとされるゴムボートで、最大の特長は「軽量で収納サイズがコンパクト」になることです。

今回使用したフロンティアの「WW−275」の本体重量は、たったの3.5kg!

(「WW-275」は販売終了しました。現在はマーシャスWW-275 3/4シート」を取り扱っております。)

右がWW−275(重量3.5kg)で、左はWW−255(重量3.0kg)。いずれも流水用モデル

3.5kgって重くない? と思うかもしれませんが、空気で膨らませる従来のインフレータブルカヤックの重量が10kg以上もあることから考えると、3.5kgは画期的に軽いといえるでしょう。

そして収納状態は、幅が約36cmで長さは約26cmと、バックパックにパッキングできるほどコンパクト!

これはWW−255を丸めた状態。大型のバックパックなら縦にして中に入れることができる。WW−275の収納状態もほぼ同じ

パックラフトは背負って持ち運ぶことができるので、バックパックを担いで電車で現地へ向かい、川を下って、また最寄り駅から電車で帰って来るという遊び方ができちゃうのです!

そんなパックラフトの機動力を生かせるのが、今回挑戦する約10㎞のコース。

御嶽駅をスタートして、下流にある青梅駅付近までダウンリバーを楽しみ、陸に上がってからパックラフトを背負い、最後は青梅駅から電車に乗って帰宅するという計画です。

 

めざすは約10km下流の青梅駅!

パックラフトについておさらいできたら、さっそくスタートの準備開始!

フロンティアのパックラフトは、付属の収納袋をポンプとして使用できます。袋に溜めた空気を10回ほど送り込むと、しぼんでいたパックラフトがみるみるうちに船の形に膨らみました。

想像よりも早く膨らますことができた。最後は口で空気を入れて膨らみ具合を微調整する

               

次は船首に荷物を固定するのですが、これには正解がありません。主にクライミングシーンで使うスリングやカラビナなどの登攀具を駆使して、あれこれ考えながら荷物が動かなくなるように本体にきつく固定します。

船首の回りにあるDリングにスリングとカラビナで荷物を固形。動かなくすることがポイント

ちなみに、今回使った「バウバッグ」(左)は耐水性の高いパックラフト専用の荷物入れで、「メッシュデッキバッグ」(右)は水筒や食べ物など濡れてもいいがすぐに取り出したい荷物の収納に便利。

フロンティアには使い勝手のいいアイテムが揃っています。

準備ができたら川に浮かべた船に乗り込み、さっそくゴールへ向けて出発です!

 

「進む」と「曲がる」の操縦ができれば、とりあえずOK

パックラフトは軽量コンパクトのほかに、操縦が難しくない点も魅力のひとつ。

事実、私がパックラフトに乗るのは今回が2回目。

1回目は、同じく御嶽駅の駅前にある「みたけレースラフティングクラブ」の講習会に参加して、午前中は多摩川の上流にある白丸湖で操縦方法を学びました。

パドルを使って船を回転させる方法を「スイープ」という。川下りの前に覚えておくべき基本技術

操縦方法といっても難しいことはなく、教わったのはパドルを使って前に進む方法と、障害物を回避するときに使う船首を回転させる方法の2つだけ。

船がひっくり返ったときの対処法も教えてもらいましたが、これは技術というほどではなく、流される船へ泳いで近づき、腹ばいになって再び乗り込むという力技でした…。

それから、当日の午後には今回のコースの前半部分を講師と一緒に下った程度しか経験がありません。

もちろん、セルフレスキュー技術など、まだまだ学ぶべきことは多いのですが、未熟ながらも最低限の操縦方法さえ覚えればパックラフトで川下りを楽しめる点は、大きな魅力といえるでしょう。

 

ときには急流を下り、ときには仰向けで流れに身を任せよう

いざ、青梅駅へ向けて出発!

実は今回のコース、御嶽駅から出発して最初に見えてくる大きな軍畑大橋までが最大の難所。初っ端から瀬と呼ばれる、流れが急になっているポイントを突破します。

ダウンリバーのコツは流れのラインを読むこと。ときには大岩などを回避するために船首を回転させて、右へ左へ、流れにのって急流を下っていく

白波を立てて暴れる水面に船首から突っ込むさまは、まるで遊園地のジェットコースター。そして、これこそダウンリバーの醍醐味のひとつです。ホー! ホー! と歓喜の声を上げながらラインを捕まえて急流を突破していきます。

そんな束の間のスリルを満喫すると、今度は川幅が広くなり、流れがおだやかな区間に入りました。

瀬がなくなると一変して辺りは静かに。周囲の景色を眺める余裕が出てきた

さっきまでのハラハラドキドキはどこへやら。前方には回避すべき障害物がすっかりなくなり、パドルを漕がなくてもパックラフトは勝手に流されていきます。

こういうのんびりしたところでは、足を伸ばして仰向けに。まさに、川の流れに身を任せ〜♪状態

ゴロンと寝転んでみると、目の前には青空が広がり、周囲の景色がゆっくりと後退していきます。太陽の光が暖かく、川の中に手を入れると、今度は清流の冷たさが指先から伝わってきました。

最近まで仕事で忙しい日々を過ごしていたので、こういう自然との触れ合いがすごく幸せ。

ふと河原に目を向けると、羽を休める数羽の鷺(サギ)がいることに気付きました。

今回のゴールとなっている青梅駅より西に広がるエリアは奥多摩と呼ばれており、東京都にありながら豊かな自然が残るアウトドアの聖地として知られています。

ハイキングや登山でもその自然を感じることができますが、川の上で出合う豊かさは、また別モノ。

一本の川を舞台に、左右に広がる緑と、傍らに暮らす動物たちを目の当たりにできるのは、ダウンリバーならではの体験といえるでしょう。

 

休憩を挟みつつ、気付けばゴールは目前。川下りのフィナーレです

適当な河原で休憩中。お昼寝をしたいくらい気持ちがいい

すっかりパックラフトの操縦にも慣れたところで、じんわり上半身が疲れてきたので適当な河原に上陸して休憩しました。今回のコースには開けた河原がいくつも点在するので、好きなタイミングで休めるのがいいですね。

そして、休憩中に乾いた喉を潤したいとき、役立つアイテムが浄水器。目の前を流れる大量の水を飲まない手はありません。

カタダインの「ビーフリー」を使って川の水をゴクゴク飲む。ん〜、うまい!

時間の使い方に決まりはないので、休みたいときに休んで、漕ぎたいときに漕ぐ。そんなのんびりした計画がパックラフトにはピッタリです。

ちなみに、今回初めて荷物を積んでパックラフトを漕いでると、船首に載せた荷物のおかげで足を突っ張ることができるので、姿勢が安定することに気付きました。しかも、荷物を載せたことで全体のバランスが悪くなることもありません。

荷物の重さがあるぶん船首が沈むと思ったが、逆に姿勢が安定してびっくり

その後も休憩を数回繰り返しながら多摩川を下り続け、出発から約3時間、ついにゴールの目印となる万年橋が見えてきました。

目の前に見えるのがゴールの目印「万年橋」。出発から5本目の大きな橋と覚えておくといい

この橋を過ぎて大きく左へカーブした地点にかかる小さな橋のたもとが今回のゴール。上陸するポイントです。

船から降りると達成感MAX。いつの日か、さらに下流も下ってみたい

前回は瀬の突破で転覆を経験したのですが、今回はトラブルもなく無事ゴール! この達成感はなんだか病みつきになりそうです。

河原に上がったら船を担いで橋のたもとにある駐車場へ。ここにも公衆トイレがあるので、荷物を整理しつつ服を着替えることができる
パックラフトは空気を抜いたら三つ折りに。最後は端から丸めてコンパクトにまとめる

上陸後、時間が許されるならもっと下流までパドルを漕いで川旅を楽しみたかった…。そんな後ろ髪を引かれる思いでパックラフトの空気を抜き、パッキングが済んだら青梅駅へ向かいます。

ここから駅までは徒歩で約15分。つかの間の思い出を語り合いながら歩いていたら、あっという間に到着しました。

最終地点の青梅駅に到着。電車でサクッと帰れるのがパックラフトのいいところ

あとで経験者に聞いてみると、今回のコースはパックラフトで下るには少々難易度の高い行程なのだとか。船を漕いだ経験がない方は、ツアーに参加して一度でもパックラフトの操縦方法を学んでから挑戦するのがおすすめです。

今回のダウンリバーでは、太陽の暖かさ、水の冷たさ、川の流れ、その周囲で育まれる緑と動植物の気配など、気付いたことは数知れず。

そんな感動に浸る男がいることを知る由もなく、多摩川はいまもかわらずに、とうとうと太平洋へ向かって流れていくのでした。

最後に、こちらが今回用意した荷物。着替えやタオルのほかに、浄水器、温かい飲み物を入れた保温ボトルなどを用意して。フローティングロープといったレスキューアイテムも一応準備。これらを濡れ対策で耐水性の高いドライバッグに入れてパックラフトに積載しました。

「①着替え ②インフレーションバッグ ③ドライバッグ ④保温ボトル/シグ「ジェムストーン 0.75L」 ⑤バックパック ⑥バックル付ナイロンストラップ。丸めたパックラフトをまとめるときに使う ⑦サバイバルシート/SOL「エマージェンシーブランケット1人用」 ⑧浄水器/カタダイン「ビーフリー 0.6L」 ⑨ライター・リペアキット・速乾タオル/ギアエイド「マイクロファイバータオル」  レスキューギア(フロ−ティングロープ・ゴム手袋・アクセサリーコード・スリング&カラビナ荷物の固定に使用)」

 

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山岳ライター:吉澤英晃

山岳ライター吉澤英晃が、アイテムを実際に使ってみてレポートする連載企画。
登山からキャンプギアまで様々なアイテムの使用感や特徴を紹介していきます。(構成・文:吉澤英晃)

【自己紹介】
大学の探検サークルに入部したのことをきっかけに登山を開始。
社会人山岳会に所属し、夏は沢登り、冬は雪稜からバックカントリーまで、一年中山で遊んでいる。
登山用品の営業職を経験した後、現在はフリーライターとして活動中。

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