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スター商事

山岳ライターの商品体験レポートProduct Report

【動画あり】国内最古の灯油バーナー「マナスル」の使い方と、秘められた魅力に迫る

 マナスルの存在は前々から知っていましたが、実際に触れて使ってみるのは今回が初めて。興味津々で真鍮の古道具を眺めていると、さっそくある点に目を見張りました。隅々まで見回しても、そこにあるべきバーツが見当たらないのです。

 バーナーといえば、火力を調整するツマミが付いているのが当たり前。以前取材した、マナスルと同じクラシックな灯油バーナーのひとつであるオプティマスの「123R スベア」にも、火力調整ダイヤルはちゃんと備わっていました。しかしそれがマナスルにはない。これでは、どうやって火をつけて消せばいいのか、皆目検討がつきません。

 

 そんな腫れ物に触れるような状況で取材は始まりました。

 

「マナスル」は故障が少ない国産バーナー

左から「マナスル96」「マナスル121」「マナスル126」

 

 スター商事が取り扱うマナスルは、現存する、数少ない国産の圧力式灯油バーナーのひとつです。タンクの容量によって「マナスル96(0.2L) ¥23,000+税」「マナスル121(0.4L) ¥24,000+税」「マナスル126(0.8L) ¥25,000+税」の3つに分かれています。

 

 最新の軽量コンパクトな登山用バーナーと比べてしまうと、大きくて重い、と欠点が眼についてしまうマナスルですが、じつは秀でた特徴を秘めた道具であることが、数々の実例によって証明されています。

 

 マナスルが選ばれるシーンは、登山隊の海外遠征や北極圏での冒険など、人里から離れたシビアな現場。そこでは自動点火装置が作動しない、火力調整ダイヤルが壊れたなど、不具合によって致命的な状況に陥る可能性があり、計画中断を余儀なくされることもあります。

 

 しかしマナスルは、それらのトラブルとは無縁の存在。つまりほかのバーナーとは比較にならないほど、圧倒的に故障が少ないのです。事実スター商事に持ち込まれる、バーナーとして機能しなくなったという修理依頼は、ほとんどないと言います。

 

 それもそのはずで、マナスルには自動点火装置がなく、燃料の噴出孔を自動でクリーニングする機能もなく、もちろん火力を調整するためのダイヤルもありません。仕組みがシンプルであるからこそ故障の心配が少なく、たとえ不具合に遭遇しても、自力で解決することができるのです。

マナスルの燃料の噴出孔。火力が弱まった時は付属品の掃除針を使ってクリーニングする

 

 さらに国内の工場で、職人の手によって一台一台丁寧に作られている品質の高さも、マナスルにトラブルが少ない理由のひとつと言えるでしょう。

 

 とはいえ、週末のキャンプなどではこの丈夫なマナスルのありがたみを感じる機会は少ないはずです。しかし、いまだにマナスルは根強い人気を誇っています。それはなぜなのでしょうか?

 

 実際に使いながら、マナスルが愛され続ける理由を探っていきましょう。

 

マナスルの使い方

 

 まずは同梱品を確認します。

 次に各部位の名称を覚えていきます。

 

 予備知識を頭に入れたら、さっそく実機を扱っていきましょう。

 

 まずはタンクにバーナーを取り付けます。時計回りにねじ込み、最後に付属品のスパナできつく締め上げます。

緩みがなくなるまで強く締め込む

 

 次はタンクに燃料を注入します。マナスルに使用できる燃料は灯油です。注油口のキャップを外したら、紛失を防ぐためにポンプハンドルの先端に取り付けておきましょう。蓋を開けたら付属のジョウゴを使って燃料を入れるのですが、このジョウゴが曲者。急いで灯油を注ぐと、ジョウゴを差し込んだ注油口から燃料が漏れてくるので注意が必要です。少しずつゆっくりとタンクの半分くらいまで燃料を入れます。

注油口のキャップはポンプハンドルの先端に取り付ける

 

 燃料を注ぎ終えて注油口をしっかり閉めたら、プレヒートを行うために予熱皿に着火剤を盛り付けます。取扱説明書には「8分目程満たし」と書かれていますが、深く考えず、ぐるり一周バーナーを囲うように着火剤を乗せればOKです。

使用している着火剤は「スターバーニングペースト ¥380+税

 

 最後にタンクへ三脚を差し込み、バーナーにフレームリングと風防とをセットすれば準備完了です。

 

ここからの手順は動画をご覧ください。
(※今回は撮影のために特別に室内で使用していますが、マナスルは屋外専用のストーブです。必ず屋外でお使いください)

 

 扱いにくいと嫌煙されがちなオプティマスの「NOVA(ノヴァ)」も「123R スベア」もそうでしたが、一度手順を覚えてしまえば難しいことはありません。むしろ構造が単純なので、燃焼までの行程を理解すれば扱いを誤ることはないでしょう。

 ちなみに再び火を付けて約700mlの水が沸騰するまでの時間を計測してみると、5分40秒というタイムでした。早くはないですが、極端に遅いとも言えない。許容の範囲内ではないでしょうか。

 

 使用後はタンクまで熱くなるので、冷めるのを待ってから片付けましょう。

 

マナスルの魅力は、自力で火を作るリアルな実感

 

 最初は腫れ物のように感じていた古道具が、使い方を学ぶと不思議と手に馴染み、気付くと数年前から使い続けてきた愛用品のように親しみすら感じる存在に変わりました。そして実際に使ってみて後に残ったのは「自力で火を作り出したリアルな実感」です。ツマミを捻れば自動で火がつくガスコンロとも、自動点火装置が備わる最新のバーナーとも違う、火を作る、という生の実体験が、こそばゆいように面白い。そう感じる背景には、不便に感じる手順を経た先に、一種の達成感のようなものが含まれているからかもしれません。事実、火をつけるまでの行程だけでも繰り返し行いたいという衝動に駆られる自分がいました。

 

 機能では見劣りしますが、道具として面白い。これこそがマナスルが現代でも愛され続ける理由なのではないでしょうか。

 

マナスル

マナスル96 ¥23,000(税抜)

マナスル121 ¥24,000(税抜)

マナスル126 ¥25,000(税抜)


山岳ライター:吉澤英晃

山岳ライター吉澤英晃が、毎月1つのアイテムを実際に使ってみてレポートする連載企画。
登山からキャンプギアまで様々なアイテムの使用感や特徴を紹介していきます。(構成・文:吉澤英晃)

【自己紹介】
大学の探検サークルに入部したのことをきっかけに登山を開始。
社会人山岳会に所属し、夏は沢登り、冬は雪稜からバックカントリーまで、一年中山で遊んでいる。
登山用品の営業職を経験した後、現在はフリーライターとして活動中。